ちょいとしつれいします

映画や本や趣味などを失礼ながら好き勝手に綴ります

JR上野駅公園口

なんとか読破した

 

自分には容易に批評しえぬ難解な小説だった

 

あとがきにもあるが、膨大な取材が元になっているのはよく分かる

 

それほど描写が細かい

 

重厚ととるか、過剰ととるか分かれるように思う

 

全米図書賞というアメリカでもトップ3に入るような価値ある賞を受賞した

ということで話題になっている

 

東北からの出稼ぎ労働者の生き様と視点を通して、歴史、制度、災害などを含んで

叙事詩的に描いたのが評価されたのだろうか

 

凄い本だと言うとよく分かってるなと言われそうでもある

 

抽象画を評価するみたいな

 

見方によって変わる

 

様々な講評がある

 

概ね、主人公の物語として読んだ人は辛口採点だ

 

たしかにリアリティに欠ける設定と展開になっていて没入感が乏しい

 

息子を亡くし奥さんを亡くし最後には震災で孫も亡くす必然性があるか

 

とんでもなく辛く悲しい男の人生なのだが残念ながら気持ちが入らないのだ

 

さらっと読めてしまう

 

ああそうかと

 

もしかすると作者の主要テーマたる意図はここにはなかったのかもしれない

 

これもあとがきで書いていたが出稼ぎで苦労する人々と震災で失意にある人々との

橋渡し?オーバーラップ?的な小説を書こうとしたとある

 

あと天皇制への批判?ここは自分にはよく読み取れなかった

 

出稼ぎ主人公の悲惨な過去と心の慟哭に対し、あまりにも写実的なホームレスや公園の場面描写がバランスが取れていないと感じてしまうのかな

 

自分はそう感じたんだと思う

 

そこに難解さを感じてしまったんだと

 

冒頭から始まる出稼ぎ主人公の慟哭ともいえる内面描写はあえて取り入れず

あくまで東北(青森か)での生活の厳しさ、出稼ぎに出ざるを得ない状況、

息子の死を外面描写で淡々と描く(描いている)ので十分伝わるように思う

 

そして、その後、上野でホームレスになる下りがやっぱり少し???となる

 

奥さんの急死から孫に迷惑を掛けるのでとあるが、失踪まがいに家を後にする

というのはどうも解せない

 

ここで躓く読者が多いように思う

 

まあ書こうとしたテーマに沿うためにそういう設定にせざるを得ないのは理解できるが

それを見抜かれてはやはり少々拙いだろう

 

あるいはそうではないと

 

つまりテーマに沿うためではないとするのなら、失踪までの経緯をもっと必然性を持って描かねばならないだろう

 

しかしながら描写力と表現力は見事なものでとても真似できるレベルではない

 

精緻な目に加えて感性が豊かなんだなあ

 

羨ましい