凪待ち
喪失と再生がテーマとのこと
ギャンブル依存症(酒はそこまででもない)の男が、流れのまま無為に生きていき、立ち直るまでを描いている
香取慎吾の演技は悪くないと思う
ただ演じるキャラ設定が分かりづらく感情移入しにくい
わかるのはただ何となく生きてギャンブルが好きだというだけ
ここがこの映画の最大ポイントのような気がする
ストーリー(イベント)に重きを置きすぎてしまい、人間を描き切れていない
自分をろくでなしだとかくそだとかを呟いたり叫んだりするのだが、それはやっていること、つまりギャンブルに使う金を内縁の妻?のへそくりから誤魔化すとか、その妻が死んで、旅行に積み立てていた金にまで手を付けるシーンで見ている方は十分理解できる
問題は、彼の心象なのだ
彼はものすごく後ろめたくてやっているのか、それとも平気なのか、自己破滅タイプなのでとことんまで行かないとどうしようもないのか
それをしっかり描ければ、妻が死ぬとか、その犯人が恩人とか、ヤクザとのくだりとか、最後に昔の仲間が捕まるとか、あまりにリアリティの乏しい数多くのイベントはそれほど入れ込まなくてもよくなるように思える
そうすれば、もっとしっとりと落ち着いた展開で、映画そのものの深みを増すように思えた
ただそれが日本映画は不得手なんだなあ
どうしてもこれでもかとイベントに頼ってしまうキライがある
凪待ちという言葉を調べてみたがそもそもそんな言葉はないらしい
しかも今知ったが、映画の宣伝に、なぜ殺されたのか、誰が殺したのかとある
ええっ、そんなサスペンス映画?うそでしょ
サスペンス的要素はどこにもなかったでしょ
確かに内縁の妻を襲って殺したのは誰かというのはずっと残って行くけど、あの展開からすると、元の旦那を疑わせながら、実は恩人みたいな人がやってて、主人公にとっては再生のための一つのイベントになるのだろうなと予想させ、その通りになったし
でも本物のサスペンスならともかくいらないイベントだと思うしね
ここまできてまたふと気づいたけど、喪失と再生がテーマではないかも
いくおは何も喪失していないから
彼は元々何も得ていないのだから
彼は自分も他人も信じられない人だけど、自分にも他人にも甘えられる人
そしてそれを重荷として心に負っている
多分幼少期からそれに気づいている
どこかでそういう自分を変えたいとずっと思いながら生きてきたけどどこかの段階で諦めている
ギャンブル依存がどんどんひどくなって、内縁の妻にも愛想をつかされるが、がん末期の妻の父親だけは見捨てない
自分の若い頃を投影し、自分の倅と思って最後の最後まで付き合う
船を売った金でノミ屋の借金を返させようとするが結局それもギャンブルに使ってしまう
やけになって飲みすぎて祭りで大喧嘩になり入院する
壊した弁償金がない
妻の父はその借金を返そうと孫娘と共に市場で朝早くから重労働を始める
わずかな金を持って壊したところに回る父と謝罪に訪れたいくおがばったり会う
いくおがくずおれる
そのいくおにお前は俺の倅じゃないかと言う
エンド