ちょいとしつれいします

映画や本や趣味などを失礼ながら好き勝手に綴ります

さがす(映画)

「さがす」という佐藤二朗主演映画を見た

 

まあまあ面白かった

 

ネットで自殺を助ける事件があったように記憶するが、あれに着想を得たのだろう

 

まず良い点から

 

大阪が舞台で、関西弁のやり取りがテンポ良く、描かれる内容が暗い雰囲気になりがちななかで、コミカルな味付けになっていてそれを感じさせないのが良いと思った

 

娘役の伊東蒼、犯人役の清水尋也の演技が素晴らしい

 

あと足を骨折する自殺願望のある女性(名前がわからない)役の彼女も良い

 

佐藤二朗が失踪して、実はこうだったという意外性ある展開も悪くない

 

次にうーんと思う点

 

実は良い点と真逆になるのだが、せっかくの大阪のコミカルな味付けが後半消されるのが勿体無い

 

急にシニカルになるし、なのに、最後の卓球のシーンのやり取りでまたコミカルな雰囲気を入れ込んできてしまう

 

このバランスがよろしくなくてトーンの一定感がない

 

見るものを裏切るとか意外性を出したい意図かもしれないがそうだとするなら完全に失敗している

 

それはシナリオそのものにも原因があるようにも思えた

 

ポンジュノ監督の影響?だか何かがあるようなコメントがあったのでああそうかと思ったが、韓国映画にありがちな展開ではある

 

奥さんが不治の病に罹り、ネットで見つけた男に殺害を依頼するという設定がそもそもの失敗の始まりだろう

 

あそこまで奥さんを思う夫で、しかも楽にさせてやりたいと本気で思うならどれほど辛かろうが自分の手でやるはずである

 

愛する人に対してはそういうものではないか

 

まずそこに無理がある

 

さらに、基本的に奥さんは自分で死ねない病気にも関わらずあのように亡くなれば、殺人の疑いが起こるはずであるがそこは全く触れられないのも不自然である

 

さらにさらに、佐藤二朗が犯人の片棒を担ぐ理由が不明である

 

動機が乏しすぎる

 

お金目的のように描いてあるが、なにぶん弱い

 

匿名アカウントで連絡を取って犯人の元に連れてくるというオレオレ詐欺の受け子のようなことなのだが、犯人に、死にたい人は多いと言われて果たしてやるか

 

あの犯人はきちんと描かれてはいないが、元々の背景に異常者の資質があるので理解できるが、佐藤二朗に至ってはごく普通のまともな人間であって、単にお金に困っているくらいでそんなことに手を貸すなんてことはあり得ないのだ

 

また、島に渡ってみかん栽培をする老人を殺して家に入り込むのもだめ

 

過疎化が進んだような島だったが、であるなら余計に住民同士のつながりは強いはずでしかもみかんを栽培しているということは、何らかの業者なりとも関係があるはず

 

あの老人がいなくなればすぐ誰かが気づくのは間違いない

 

大都会の話ではないのだから

 

最後に、佐藤二朗が犯人を殺す展開にも違和感がある

 

要は人を殺すことに躊躇いがなくなり、金のためと自分が捕まらないためにという動機でやったのだとしたいのだろうが、まともな人間があのようなことをやれば必ず葛藤に苛まれるはずで、肝心のそれが全くない

 

300万の札束が、よくある上下のみ本物で中身が普通の紙というのも正直ダサい

 

受け取る方はパラパラめくるくらいのことは間違いなくするはずである

 

まあ荒唐無稽だから面白いのだと言われればそうかもしれないが、着想と配役が良いだけに本当に勿体無いなと思わせた