影裏を観て
WOWOWで観たのだが、番組紹介欄にはサスペンスとあったので期待したのだがちょっと違っていた
観終わり、これは原作があるなと確信し、調べてみるとやはり芥川賞受賞作であった
きっと大きく評価は二分するだろうなと思ったらやはり当たっていた
行間を読んで楽しめるタイプとストーリーに興味を惹かれるタイプではまるっきり印象が異なるのではなかろうか
映画の評価は原作より少しばかり低いように見受けられる
行間を読むような映画、これを純文学というかどうか分からないが、映像にするのは相当にチャレンジャブルである
自分もよく理解できなかった
LGBTを扱っているのは分かったし、対照的な人物を描いているのも分かった
ラブストーリーといえばそうだし、社会派といえばそうだし、サスペンスといえばいえなくもないという要するにちょっとゴチャッとした印象を持ったのだ
でもまあ悲恋物語なんだろうな
ただとなると題名が???となるんだな
松田龍平演じる日浅という人物が、綾野剛演じる主人公に対し、人を見るときにはその最も裏の影の黒い部分を見なければいけないというセリフがある
まあこれが影裏というタイトルを象徴したセリフなんだろうがそうなるとサスペンス寄りになってくる
ただ原作が芥川賞ととった純文学となるとまた話がこんがらがる
もちろんエンターテイメントでは全くない
そして盛岡の美しい風景や祭りなどが情感豊かに映像化されている
さらにここに東北大震災が絡んでくるのだ
あくまで映画の感想だが(原作は読んでいないので)
小心者で生真面目のLGBT主人公が、奔放に振舞う男友達に自分にないものを感じて惹かれていくがその男の裏の顔は主人公が想像もしないものだった
これが本線、つまりミステリアスな男友達の正体が少しずつ明らかになる
この本線に男友達が行方不明となる原因に東北大震災を持ってきたのが複線、あの大津波で生きているのかどうか分からないという実際にあり誰もが見聞きしたエピソードだ、つまりここにもミステリアスな要素が含められる
そしてそれが盛岡を舞台に展開される(原作者は盛岡在住らしい)
うーむ
ゴチャを解きほぐしてみるか
純文学ならどうなる
主人公の男友達への愛がもっと深く描かれねばならないだろう
ああ好きだったんだくらいではなく
どこまでもどこまでも深く知ろうとする
裏の裏の裏、生死まで含めて
その先には絶望があると知りながら
東北大震災のような大きなエピソードは逆に不要になる
ある日ふといなくなれば良い(その方がインパクトが強い)
そしてラストがあの釣りのシーンではいけないだろう
やはり何らかのサインめいたもので死を暗示し主人公が失意のうちに慟哭せねばならない
純文学ではなくサスペンスとして描いたらどうなる
LGBT設定が不要になる
男友達の裏の顔がとんでもないもので、実は自分も騙されていて、知らない間に自分の貯金が全て引き出されていた
過去を追っかけると、男友達の周りでは不自然な事故や自殺が相次いでいた
自分にも危険が迫るのを感じる
男友達から逃げようとするが逃げられない
最後に決定的な証拠を掴むが男友達は消えたように姿を消してしまう
どうだろうか