ちょいとしつれいします

映画や本や趣味などを失礼ながら好き勝手に綴ります

影踏み

ちと古いがようやく見た

 

横山秀夫の原作と言うことで興味深かった

 

横山秀夫といえば警察小説の印象とサスペンス的要素が強い

 

ただこれはちょっと毛色が違ったようだ

 

はっきり言って映画化には適さない原作だろう

 

内面を映像化するのは非常に困難だから

 

今まで見た映画の中で最も内面をうまく映像化していた映画は村上春樹原作のバーニングだと思う

 

原作を忠実に再現しているわけではないが脚色のなかにうまく内面を取り込んでいる

 

影踏みは双子の兄弟が心に抱える昏さを表現しようとしている

 

自分の影のようでいて常に比較される

 

一人の人格として存在したいのだがそれが成立しないもどかしさ

 

違っていると思いたいが実際にはあまりに似ている

 

相手から逃げ出し遠ざかりたいのに影のようについてくる

 

自分は双子ではないが、兄弟なので多少その気持ちは分かる

 

双子なら相当なものかもしれないと

 

難しいテーマに真正面に取り組みそれなりの作品に仕上げたのは監督や俳優の力だろう

 

あえていえばバーニング同様、映像化ゆえの思い切った脚色があって良かったのでは

 

亡き弟を実在かのように見せる工夫はよく練られていると思う

 

ただ小説のように多層的に描いたものを同じように映像化するとかえってボケてしまうように見えてしまうのでレイヤーをもっと減らしても良かったかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミリオンダラースティーラー

めちゃくちゃ面白く良く出来た映画だ

 

アルゼンチンの映画だそうだ

 

銀行強盗の実話を元にしている

 

どうせB級映画だろうと思って見始めた

 

いつもの通り最初の20分で見続けるかどうか決めるつもりで

 

そうしたら目が離せなくなった

 

途中からこれはB級どころか相当レベルが高いと思うようになった

 

まず実話を元にはしているが、脚本が良い

 

相当知能指数の高い首謀者が仲間を引き込んで大胆な手口の銀行強盗をやってのけるのだがそれ自体もちろん面白いが本作はそれがメインストリームではないのだ

 

ネットで本作のコメントを漁ってみたがそこに言及しているものはほとんど見当たらなかった

 

首謀者がカウンセラーと面談するシーンが織り込まれている

 

最初はなんだろうと思うが最後に事件を起こす一週間前の出来事だと分かる

 

現場に残されるメモは多分実際にあったものなのだろう

 

そして印象的な言葉

 

銀行経営者と強盗犯のどちらが本当の悪者なのか

 

これが本来のメインストリームになっている

 

社会派とまでは言わないが風刺が効いている

 

そしてサブストリームに父親と娘の愛と絆が描かれる

 

これは実際でなく脚本だろうと思える

 

この流れは見事というしかない

 

演出やカメラワークも非常に巧みで丁寧だ

 

緻密に計算されている

 

俳優も良い

 

もちろん知らない俳優ばかりだが演技力は相当なものだ

 

アルゼンチンでは国内第5位のヒットらしいがこれで5位ならその上の作品が見たくなる

 

大きなコンクールにノミネートされたり賞を取っても不思議ではないとさえ思うが、実話を元にしている映画はなかなかその対象にはならないのだろうか

 

ホテルムンバイもそうだが

 

まあいいや

 

しかし久しぶりに面白い映画だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥多摩トリップ

先日奥多摩に行った

 

東京にあのような渓谷があり澄んだ水が流れているとは知らなかった

 

元々山と川のせせらぎが大好きだ

 

山派と海派があるとするなら100%山派だな

 

もちろん海が嫌いなわけではまったくない

 

ただなぜか海には郷愁というか寂しさを感じてしまうのだ

 

海で見る朝陽は力強いが、イメージとしてはいつも夕陽になる

 

ロマンチックではある

 

山には不思議と温かみを感じる

 

山を見ると心が落ち着き癒される

 

好きな山の近くで毎日その山を見ながら生活できたら素晴らしいと思う

 

生活は不便だろうがその不便さも気にならないかもしれないとさえ思う

 

日原鍾乳洞にも寄った

 

平日だったせいだろう、ほとんど人がいない

 

ナメていたが意外に大変だった

 

新洞という方向に行くと急峻な上下階段になっていて運動不足の身には堪えた

 

しかし久しぶりに楽しかったな

 

短編小説のネタなんかも色々と考えてみた

 

近いうちにモノローグ酒場にアップするつもり

 

都内から高速なら2時間弱

 

まあちょっとしたドライブにいい場所かもしれない

 

しかし山はいいなあ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧友

先日、旧友と飲んだ

 

もちろん昼飲みだが

 

旧友とはいっても会社にいた頃の同僚だ

 

彼は今年3月で定年するらしい

 

約1年ぶりに会った

 

彼はいわゆるいい漢だ(男ではない)

 

見た目はまあおいといて誠実で物静かでガッツがあり自分の主張を曲げない強さを持ち上司の理不尽な要求にも敢然と立ち向かう

 

素晴らしい漢だ

 

彼と友人になれたことは自分にとって望外の喜びだ

 

彼は定年後の過ごし方を心配していた

 

自分と同様これといって趣味もなく仕事ばかりやってきた人間なので戸惑っている

 

といって自分にも大してアドバイスもできない

 

ただ彼は仕事の内容的に他社に再就職するもしくは声がかかる可能性もありそれなら仕事を続けたらどうかと伝えた

 

彼も同意していた

 

その後昔の上司の愚痴を言い(ほとんどは自分だが)大笑いしながら飲んだ

 

楽しかった

 

男はなかなか群れないし群れるのは得意ではない

 

どちらかというと一匹狼である

 

特にトシを重ねるごとにその傾向が強くなるようだ

 

自分の親父もそうだった

 

女房の親父もそのようだ

 

小中高くらいの同級生と再会すれば昔話に花を咲かせ楽しく飲んだりもできるがたぶん続かない

 

人生を通じてずっと友人としていられる人はいったい何人いるだろう

 

意外と少ない

 

たまに会って飲んだりゴルフをしたりするのも友人といえば友人だが

 

それは友人というより遊び仲間といった方が適切かもしれない

 

こいつのためならお金でも何でもひと肌脱いでやろうと思えるような人はいるだろうか

 

そういう友人がたくさん作れたら最高だな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤井総太棋士の選択

藤井総太 言わずもがなの天才棋士

 

すでにタイトルは2冠で、段位は八段

 

順位戦ではB級2組を全勝で突破し来期はB級1組

 

いよいよA級が見えてきた

 

河口俊彦さんの書によると、B級1組というのはなんとかの棲み処で、下から上がってくる名人候補のような強い者はとっとと勝ち抜けさせてA級に押し上げるんだそうだ

 

なぜならいつまでも居られると困るかららしい

 

一方、弱い者はみんなして徹底して叩く

 

これはイジメるという意味合いではなく、一人負けにして勝ち星を稼ぐという意味だ

 

要するにB級1組(いわゆる七段)という場所は、対局料もそこそこ高く(A級の七掛け)世間的にも見栄えがいいので居心地がいいらしい。

 

強い者を上げ、弱い者を叩く

 

それがB級1組にながくいられるコツだとか

 

とすると藤井総太2冠はあっと言う間、つまり一年でA級に上がるだろう

 

A級の面々はびくびくしているに違いない

 

それにしても彼はどこまで強くなるのか

 

へんな例えだが優良企業の株価みたいだ

 

大きく伸びる会社の株価はもう上がらないだろうと皆が思ってからさらに上がっていく

 

常識を超えている

 

常識人が常識を超えた人を評価などできない

 

去年、彼はもう一皮むけたと言われている

 

強かったがさらに強くなったと

 

超超優良企業だ

 

テスラみたいなものか

 

その彼が高校中退を選択したという

 

昔の将棋界には学校の勉強などするものではないとされていたそうだ

 

将棋の邪魔になる

 

棋士の中原名人が中学校でトップクラスの成績を取ったときなどは師匠の高柳八段は叱ったそうだ

 

クラスで40人いたら、35番とかで十分だと

 

要は落第さえしなければ良いというわけだ

 

凄い話だ

 

逆にいえばそのくらいでないと将棋指しでは一流になれないという意味だ

 

二足の草鞋では無理

 

藤井総太2冠はそれを知っている

 

だからこそ高校を中退した

 

対局で多忙を極め学業がおろそかになるなんて話ではない

 

もともと一生を将棋に捧げるつもりなのだがその意思を明瞭に示しただけだ

 

常識人には通用しないし理解もできない

 

そんな世界に住む特別な人なのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

JR上野駅公園口

なんとか読破した

 

自分には容易に批評しえぬ難解な小説だった

 

あとがきにもあるが、膨大な取材が元になっているのはよく分かる

 

それほど描写が細かい

 

重厚ととるか、過剰ととるか分かれるように思う

 

全米図書賞というアメリカでもトップ3に入るような価値ある賞を受賞した

ということで話題になっている

 

東北からの出稼ぎ労働者の生き様と視点を通して、歴史、制度、災害などを含んで

叙事詩的に描いたのが評価されたのだろうか

 

凄い本だと言うとよく分かってるなと言われそうでもある

 

抽象画を評価するみたいな

 

見方によって変わる

 

様々な講評がある

 

概ね、主人公の物語として読んだ人は辛口採点だ

 

たしかにリアリティに欠ける設定と展開になっていて没入感が乏しい

 

息子を亡くし奥さんを亡くし最後には震災で孫も亡くす必然性があるか

 

とんでもなく辛く悲しい男の人生なのだが残念ながら気持ちが入らないのだ

 

さらっと読めてしまう

 

ああそうかと

 

もしかすると作者の主要テーマたる意図はここにはなかったのかもしれない

 

これもあとがきで書いていたが出稼ぎで苦労する人々と震災で失意にある人々との

橋渡し?オーバーラップ?的な小説を書こうとしたとある

 

あと天皇制への批判?ここは自分にはよく読み取れなかった

 

出稼ぎ主人公の悲惨な過去と心の慟哭に対し、あまりにも写実的なホームレスや公園の場面描写がバランスが取れていないと感じてしまうのかな

 

自分はそう感じたんだと思う

 

そこに難解さを感じてしまったんだと

 

冒頭から始まる出稼ぎ主人公の慟哭ともいえる内面描写はあえて取り入れず

あくまで東北(青森か)での生活の厳しさ、出稼ぎに出ざるを得ない状況、

息子の死を外面描写で淡々と描く(描いている)ので十分伝わるように思う

 

そして、その後、上野でホームレスになる下りがやっぱり少し???となる

 

奥さんの急死から孫に迷惑を掛けるのでとあるが、失踪まがいに家を後にする

というのはどうも解せない

 

ここで躓く読者が多いように思う

 

まあ書こうとしたテーマに沿うためにそういう設定にせざるを得ないのは理解できるが

それを見抜かれてはやはり少々拙いだろう

 

あるいはそうではないと

 

つまりテーマに沿うためではないとするのなら、失踪までの経緯をもっと必然性を持って描かねばならないだろう

 

しかしながら描写力と表現力は見事なものでとても真似できるレベルではない

 

精緻な目に加えて感性が豊かなんだなあ

 

羨ましい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影裏を観て

WOWOWで観たのだが、番組紹介欄にはサスペンスとあったので期待したのだがちょっと違っていた

 

観終わり、これは原作があるなと確信し、調べてみるとやはり芥川賞受賞作であった

 

きっと大きく評価は二分するだろうなと思ったらやはり当たっていた

 

行間を読んで楽しめるタイプとストーリーに興味を惹かれるタイプではまるっきり印象が異なるのではなかろうか

 

映画の評価は原作より少しばかり低いように見受けられる

 

行間を読むような映画、これを純文学というかどうか分からないが、映像にするのは相当にチャレンジャブルである

 

自分もよく理解できなかった

 

LGBTを扱っているのは分かったし、対照的な人物を描いているのも分かった

 

ラブストーリーといえばそうだし、社会派といえばそうだし、サスペンスといえばいえなくもないという要するにちょっとゴチャッとした印象を持ったのだ

 

でもまあ悲恋物語なんだろうな

 

ただとなると題名が???となるんだな

 

松田龍平演じる日浅という人物が、綾野剛演じる主人公に対し、人を見るときにはその最も裏の影の黒い部分を見なければいけないというセリフがある

 

まあこれが影裏というタイトルを象徴したセリフなんだろうがそうなるとサスペンス寄りになってくる

 

ただ原作が芥川賞ととった純文学となるとまた話がこんがらがる

 

もちろんエンターテイメントでは全くない

 

そして盛岡の美しい風景や祭りなどが情感豊かに映像化されている

 

さらにここに東北大震災が絡んでくるのだ

 

あくまで映画の感想だが(原作は読んでいないので)

 

小心者で生真面目のLGBT主人公が、奔放に振舞う男友達に自分にないものを感じて惹かれていくがその男の裏の顔は主人公が想像もしないものだった

 

これが本線、つまりミステリアスな男友達の正体が少しずつ明らかになる

 

この本線に男友達が行方不明となる原因に東北大震災を持ってきたのが複線、あの大津波で生きているのかどうか分からないという実際にあり誰もが見聞きしたエピソードだ、つまりここにもミステリアスな要素が含められる

 

そしてそれが盛岡を舞台に展開される(原作者は盛岡在住らしい)

 

うーむ

 

ゴチャを解きほぐしてみるか

 

純文学ならどうなる

 

主人公の男友達への愛がもっと深く描かれねばならないだろう

 

ああ好きだったんだくらいではなく

 

どこまでもどこまでも深く知ろうとする

 

裏の裏の裏、生死まで含めて

 

その先には絶望があると知りながら

 

東北大震災のような大きなエピソードは逆に不要になる

 

ある日ふといなくなれば良い(その方がインパクトが強い)

 

そしてラストがあの釣りのシーンではいけないだろう

 

やはり何らかのサインめいたもので死を暗示し主人公が失意のうちに慟哭せねばならない

 

純文学ではなくサスペンスとして描いたらどうなる

 

LGBT設定が不要になる

 

男友達の裏の顔がとんでもないもので、実は自分も騙されていて、知らない間に自分の貯金が全て引き出されていた

 

過去を追っかけると、男友達の周りでは不自然な事故や自殺が相次いでいた

自分にも危険が迫るのを感じる

 

男友達から逃げようとするが逃げられない

 

最後に決定的な証拠を掴むが男友達は消えたように姿を消してしまう

 

どうだろうか