モーリタニアン 黒塗りの記録
9.11テロの後のグアンタナモ収容所での出来事を綴った実話を元にした映画
やはり実話に優るものはない
正確な記憶ではないがグアンタナモの悪評は当時からあったがこれほどとは知らなかった
当時のラムズフェルドが指示したとされる特別な取り調べがなされるが、取り調べとは名ばかりで要は拷問である
極論を言えば、とにかく犯人を早く「仕立て上げる」ことが最優先で、それはアメリカ国家の威信がかかっていたのだろう
あれだけのテロ事件に対する報復として誰かが処罰されなければならないと
今現在、ロシアのウクライナ侵略戦争が世界的脅威になっているが、国というものを背景にすると、人間はどこまでも残酷になれてしまうのか
自分の意思ではないと自分に言い訳できてしまうのかもしれない
でも心の奥底では知っている
この映画でもそれは描かれていた
アメリカ軍側の検察官的な役割の軍人が、犯人(とは言っても、実行犯をリクルートした罪だが)の死刑台に送る証拠固めをするにあたり、自分の信念に基づいて徹底的な証拠調べを行い、拷問による自白だったことを突き止める
通常の人、特に軍人ではまずあり得ないだろう
ここに人間としての一縷の望みが残されている
そしてアメリカという国の異常さと正義
威信は守られなければならないとする異常なる国家主義が厳然としてある一方、法治国家として民主主義を守るという建前的なる正義の共存
ここにも一種の恐怖を覚えると同時に一縷の救いもある
このような事件が明るみに出て、世の人々の目に晒されるのは砂浜の砂の一粒にしかすぎない
人間の尊厳と愚かさを垣間見、そして考えさせられた
秀逸な映画である