ちょいとしつれいします

映画や本や趣味などを失礼ながら好き勝手に綴ります

ジュディ 虹の彼方に

これぞ映画で表現するに値する映画だろう

 

見応え十分だった

 

主人公のジュディは言わずもがな、あのオズと魔法使いのドロシー役を演じた女優であり、その晩年を描いている

 

彼女は2歳から舞台に立ち、周囲の大人に翻弄された半生を送ってきた

 

4人もの夫との出会いと離婚

 

3人の子供

 

特に2人の幼い姉弟とのその日暮らしの舞台生活から始まり、借金まみれで養育することが叶わず、別れた夫の元に泣く泣く預け、自分はロンドンに渡って興行せざるを得なくなる

 

この映画のテーマは「希望」だ

 

幼少期から辛い舞台人生を歩んできたジュディが、それでも「希望」を失わないで生きていくことの大切さに気づく

 

それは、最もショックで悲痛とも言える、愛娘との電話を契機に訪れる彼女の気づきだ

 

彼女は、自分の幼い子供たちは自分と暮らしたいに決まっていると思い込み、お金を工面して借金を返し、家を取り戻して、元旦那から引き取り、3人で暮らすつもりでいたが、その全てが水疱に帰す

 

信頼していた最後の夫からも裏切られ、愛娘に電話すると、元夫も家でそのまま暮らしたいと言われ、酒を飲んで舞台を台無しにする

 

自分には何も残っていないと思う

 

それでも最後の最後に、自分を気遣った、担当の女性とバンドのマスターがケーキをご馳走してくれる

 

それを一口食べて彼女は言う

 

お腹が空いていたことに気づいたと

 

ここが彼女の転換点になる

 

とうとう彼女は前を向くのだ

 

幼少期からの辛い思い出、繰り返す出会いと別れ、自分だけが頼りの生活

 

彼女の生き甲斐は2人の幼い子供だけだった

 

舞台は単なる生活のためのお金を稼ぐ場であり手段だった

 

ところが自分が勝手に?信じていた2人の子供からも信じられない言葉を聞く

 

そしてロンドン興業も失敗に終わり自分の代役の舞台の袖に来てその代役に言う

 

最後に一曲だけ歌わせて欲しいと

 

そして歌い、その後、あの歌を歌う

 

そう、虹の彼方にだ

 

あまりの感慨が胸に押し寄せたのだろう

 

最後まで歌い切ることができない

 

その時、ある夜知り合った彼女の大ファンの2人の男が立ち上がって続きを歌い出す

 

それに呼応するように観客が次々と立ち上がり歌い出すのだ

 

映画はここで終わる

 

ずっと担当していた女性は彼女のこの姿を見て、火がついたと表現する

 

そうだ、彼女は気づいたのだ

 

ずっと辛いだけの舞台である自分の仕事が、実は自分の生き甲斐だったのだと

 

こここそが自分の生きる場所だと

 

ずっと追い求めてきたものがここにあったのだと

 

幼少期に楽しく歌って踊ってお客さんに喜んでもらえるという純粋な喜びがいつの間にか長い間に忘れ去られていた

 

ようやくそれを取り戻したのだ

 

手段と不安の場が実は生き甲斐と喜びの場だったのだ

 

これを映像で表現した

 

素晴らしいと言う他ない